第1回龍生いけばなグランプリ、終了!

2020年1月25日、第1回龍生いけばなグランプリが東京・市ヶ谷の龍生会館にて開催されました。
第1回「龍生いけばなグランプリ」では、作品写真と「龍生マイスターテスト」を含む書類審査を経て、団体の部6組、個人の部6名がこの1月25日の本戦に出場。いずれの部も、まず自由花、そして間に作品審査の時間をおいて、生花、という順番で進行。そして見事優秀賞を獲得したのはなんと、個人の部、団体の部ともに昨年のプレ開催の時に優秀賞となった寺澤旭雪さん(個人の部)、そして福島県支部(団体の部)!
いずれも、自由花の部の成績中間発表では2位だったところから逆転しての勝利。そして優秀賞には届きませんでしたが、団体の部で最終的に2位となった千葉県支部には、審査員特別賞が贈られました。それ以外の団体、個人とも、予選をくぐりぬけて本戦に臨んだだけあって、自由花、生花と見事な闘いを見せてくれました。


《団体の部 本戦出場団体》
・MKG7(from両毛支部)6名
・神奈川県支部 6名
・富山支部 7名
・福島県支部 7名
・茂原支部 5名
・龍生派千葉県支部 6名

《個人の部 本戦出場者》
・東 靖光(神奈川)
・鈴木流桂(岩手県)
・寺澤旭雪(埼玉県)
・長谷川淡容(栃木県)
・平澤美春(宮城県)
・藤倉智清(栃木県)

(いずれも五十音順・各団体名は申込登録された団体名)


開会式で挨拶に立つ華洲家元
華洲家元が開会式の挨拶に立って

午前11時半。受付を終えて龍生会館3階の出場者待機スペースに集まった出場者に対して、家元からあらためて競技説明が行われる間、競技会場では事前抽選による観覧者で座席が埋まっていきます。そしていよいよ団体の部・個人の部それぞれの出場者が会館2階の団体競技会場に入場。それぞれの表情に緊張感をうかべながら、現場で初めて見る、自由花用に用意された今回の花材の種類をチェックしています。
 開会式ではまず家元から、今回グランプリ受賞者のために「龍生いけばなグランプリ杯」を団体、個人それぞれに作成したこと、副賞も用意していることが説明され、続けてグランプリの意義についてあらためてお話が。「日頃の研究会で身につけていただいた自由花と生花の技術のレベルを上げる、龍生派の教授者の皆さんの意識を高めるエネルギーになれば、というのがこのグランプリの大きな目的です。回を重ねて第10回になる頃には全国的に一大イベントとなる姿を夢見て、運営もさらに詰めていきたいと思います」と話された後は、作品審査を匿名の状態で審査する家元と教務局の渡辺雲泉、小武山龍泉のお二人が競技会場を退出。団体の部、個人の部それぞれで、競技エリアの抽選が行われ、いよいよ団体の部・自由花からスタートです。

《団体の部 自由花》

本戦は、まず団体の部の自由花からスタート
本戦は、まず団体の部の自由花から、観客の見守る中でスタート。

当日発表になった団体の部の自由花小品のテーマが「植物の貌・ニューサイラン」。そして大作は各チームごとにテーマを最初に定めて提出し、それにもとづいて作品を制作するというものです。十二時十五分、まず団体の部の《自由花》がスタート。ここでは六十分間に、大作一作と、テーマにもとづく自由花小品五作を仕上げていただきます。各団体のエリアには、各出場者・団体ごとに同じ種類、同じ分量の花材が用意され、花器も複数が同じように用意されています。また、机の上には充電式ドライバーとビスの入ったケースなども用意されています。最初に各チームのテーマが出揃うと、しばらくして墨書されたタイトル札が用意されました。団体のチームは5名以上7名までという規定があり、今回は5名で参加の茂原支部から、6名で参加の神奈川県支部、龍生派千葉県支部、そして7名での富山支部、福島県支部、両毛支部からのチームMKG7と人数はそれぞれ。そしてプロジェクターに60分の残り時間が表示されると、スタートの号令が。大作担当と小品担当に分かれる団体や、皆がまずは大作に取りかかる団体などそれぞれです。大作では、それぞれに状況設定用の材料として角材と蔓が用意されると伝えられていたこともあり、それの使い方の作戦をそれぞれに練ってきた様子。複数団体エントリーがあった両毛支部の中から本戦に進んだMKG7は、三角形に組んだ角材に夢をのせて、と「Dream on triange」をテーマに作成。のこぎりの扱いが得意なメンバーがいたという神奈川県支部は、角材の先端を斜めに切り、シャープな姿を見せた展開で光を感じさせるものを、とテーマを「The Light 2020」に。福島県支部は、まず全員で大作に取りかかり、7人のうち4人がのこぎり班、3人がドリル班と分担しての作戦。ドーム型に構築した角材から花材を飛び出させる構成で「未来へ飛び出せ!」をテーマに制作しました。富山支部は、「梅花の宴~未来へ」がテーマで、まず全員で大作に取り組み、枠組みがある程度できたら三人が小品に取りかかる、という作戦です。また、角材をどう使うかと考えて「舟型に組もう」と決め、リハーサルもしてきたという茂原支部は、「宙(そら)の舟」をテーマにしての制作でした。昨年、台風で大きな被害のあった千葉県からの龍生派千葉県支部は、その被害を吹き飛ばすようなものを、と「新生」をテーマにし、大作4名、小品2名に分担しての取り組み。テーマにもとづく小品では、福島県支部はいけ上がった段階で5作の中でのニューサイランの表情の幅は出ていたものの取り合わせが似た感じになったので全体を見ながら変更したとのこと。5人で参加の茂原支部は、先に大作を皆で仕上げてから1人1作小品に臨む作戦。初めて挑戦する舞台に、「だんだん楽しくなってきました」とメンバーに笑顔ものぞきます。

団体の部自由花 富山支部
自由花大作の土台を汲み上げる富山支部
自由花に一人一人が取り組む茂原支部
自由花 テーマ作品に一人一人取り組む茂原支部
自由花大作に取り組む神奈川県支部
自由花大作に取り組む神奈川県支部

《個人の部 自由花》

団体の部がスタートした15分後、12時半から個人の部がスタート。こちらはテーマにもとづく小品1作と、フリーテーマ1作を45分で制作するというもの。団体の部同様に、全員に同じように複数種類の器が配布され、その中からどれを選び、配布された中からどの花材を使うかはその人次第です。小品のテーマ「決意」がその場で発表になると、会場では、黙々とそれぞれが作品に取り組み、緊張感がますます高まります。平澤美春さんは最初「写真で作品添削してもらえるだけでも有意義だ」とエントリーしたところ、本戦出場になり驚いたとのこと。前回のプレ開催時に都合でどうしても参加できなかったので今回こそ、とエントリーくださった藤倉智清さんは「ずっと緊張で手が震えていて、自分でも驚きました」と話してくれました。
 「決意」のテーマで多く選ばれた花材が、ぼけとストレリチア。いずれもするどさや伸びのある花材です。そしてフリーテーマでは、葉ものがあったら手を加えて使おうと思っていたという第0回で個人の部優秀賞を獲得した寺澤旭雪さんは、ステープラーで丸めた葉を留めて使用。第0回の時は栃木県支部のメンバーとして参加した長谷川淡容さんは、今回は支部はエントリーしなかったこともあり、個人の部で本戦に出場。テーマ作品をいけ終えた後は頭をからにしてリラックスしてフリーテーマに臨めた、とのこと。


 そして団体の部、個人の部ともに13時15分に自由花の競技時間が終了。制作中は、本部派遣指導員の先生方が出場した団体や個人に一対一でついて審査を行いました。そして競技時間が終了し、観客に分かるように各テーブルに置かれていた団体名や個人名の書かれた札は外され、採点用のアルファベットが記載された札のみがある状態で家元と教務局が入場。そこで1点1点、審査していきます。

自由花作品に臨む藤倉さん
自由花作品に臨む藤倉さん
自由花作品に使う花材を見立てる鈴木さん
自由花作品に使う花材を見立てる鈴木さん
自由花作品をいける平沢さん
自由花作品をいける平澤さん

《団体の部 生花》《個人の部 生花》

自由花の作品審査が終わり、出場者が再び会場に入ると、審査時間の間に自由花で用意されていた花材は片付けられて、あらたに生花用の花材が準備されています。生花では、作品の制作過程の採点、そして作品の完成度、見立て、構成、器との関係のそれぞれの採点、そして選んだ手法や花器の難度による加点があり、二重立ち昇りいけや薄端、また花材では水仙一種いけ逆勝手などが高い加点が見込める設定。事前にこの季節だからこんな花材が出るのではとか、器は誰がどれにいけて、と予想を立てていた出場者からは、「あれっ、今回薄端がない!」「やっぱり水仙があった!」といった驚きの声も。そして団体の部・個人の部がスタート。団体内での分担は自由で、何作いけても最終的に提出作品を五作に絞ればよいとあって、花材や器、手法選びで手間取ってしまわないよう、多くの団体が、ある程度各人の担当を決めておき、当日にならないと分からない花材の割り当ては相談しながらもリーダーが決めていったそう。手早い出場者はひとりで2作いける方もあり、6、7人のメンバー全員が1作ずついける団体もあり。「花器・手法点」が高い難しい手法や花器に挑戦するか、あるいは寸胴などを使いながらしっかり仕上げて「完成度点」で高得点を狙うかはそれぞれで、提出作品決定のぎりぎりまで検討が行われていました。

生花を制作する福島県支部
生花を制作する福島県支部
生花に取り組む千葉県支部
生花に取り組む千葉県支部
両毛支部からのMKG7もそれぞれの生花に取り組んで
両毛支部からのMKG7もそれぞれの生花に取り組んで

 一方、個人の部は1作または2作を提出というルール。同程度の完成度なら1作より2作いけた方が点数は高くなるのですが、それを狙うために「完成度」が下がってしまっては逆効果。1作の完成度をしっかり上げようとする出場者、比較的手早くいけられる剣山いけと立いけとを組みあわせて2作いける出場者など、アプローチもそれぞれです。長谷川淡容さんは、まず点数の高い水仙の実株いけ本勝手を仕上げ、時間にまだ余裕があったのでコンポートでのアマリリスの生花もいけ上げていった、とのこと。水仙が出ると思っていて、2作いけると決めていたという鈴木流桂さんは水仙と、もう一作を朝鮮槙と中菊で制作していました。

生花に取り組む寺澤さん
まんさくの生花の枝を捌く寺澤さん
アマリリスの生花をいける長谷川さん
アマリリスの生花をいける長谷川さん
まんさくの生花をいけていく東さん
まんさくの生花をいけていく東さん

 そして生花の競技が進行する中、自由花審査の集計結果が発表に。団体の部では1位が千葉県支部(184.46)、2位が福島県支部(184.14)と小数点以下の点差。そして個人の部では、1位が東 靖光さん(61.00)、2位が寺澤旭雪さん(59.00)。いずれも3位以下にやや差をつけた状態ですが、まだ中間発表。1位、2位だけでなく、どの出場者もここから生花の点数で逆転も見込める範囲です。そして60分経過で競技時間が終わり、全競技終了。出場者が退場し、作品審査が終わると、あとは最終集計を待つのみ。この集計の間は、それまでは観客席で見ていた人たちも、そして自分たちの作品に集中していた出場者も、各会場の競技エリアの中に展示された自由花、生花を自由に観覧できる時間。「こういう使い方があったね」「これはすごい」と感嘆の声が聞こえてきます。

《閉会式》

そしていよいよ閉会式では、上位3位が発表されました。その団体の部の1位は、生花の底力を見せつけて逆転した福島県支部の手に! そして個人の部でも、薄端に次いで加点の高い尊式で1作、もう1作は器としての加点自体は抑えられているコンポートを使いつつ万年青をいけて完成度を上げた寺澤旭雪さんが1位に。第0回開催の優秀賞受賞から、両者とも続けての優秀賞でV2獲得です。今回は、自由花・生花合わせての最高点となる団体472.5点、個人171点の、八割以上の得点獲得者に贈られる「グランプリ」授与はなりませんでしたが、その栄誉に大きな拍手が送られました。そして団体の部2位は千葉県支部、三位はMKG7。個人の部二位は東靖光さん、三位は長谷川淡容さんという結果に。


【団体の部】
1位 福島県支部 [優秀賞]
2位 龍生派千葉県支部 [審査員特別賞]
3位 MKG7(from両毛支部)

【個人の部】
1位 寺澤旭雪 [優秀賞]
2位 東靖光
3位 長谷川淡容

1位獲得の福島県支部
1位獲得に喜びの声を上げる福島県支部
個人の部1位の寺澤旭雪さん
個人の部1位を獲得した寺澤旭雪さん(中央)

《表彰式》

グランプリ翌日に開催された、全国に参加者を募っての龍生派新春パーティでは、グランプリ表彰式も行われ、団体・個人ともに優秀賞受賞者には家元から「優秀賞」トロフィーと賞状とともに、副賞の金一封が。また、団体2位と健闘した千葉県支部に審査員特別賞が授与されました。そして家元からは、来年の第二回の本戦開催の予定も1月30日(土)に日暮里サニーホールで決定したと発表が。次回その舞台に立つのは、そして勝利を獲得するのは誰か。初の「グランプリ」獲得者は!? 今年秋頃には次回の予選エントリー受付開始となる予定です。全国からのふるってのご応募をお待ちしています!

団体の部優秀賞 福島県支部
団体の部優秀賞 福島県支部
個人の部 優秀賞 寺澤旭雪
個人の部 優秀賞 寺澤旭雪
奥が、代々のグランプリ受賞者に手渡され、受け継がれるトロフィー。手前(大)がグランプリ受賞者へ贈呈されるトロフィー、手前(小)が優秀賞を受賞した参加者一人一人への記念オブジェ